Смена-2 | 旧ソ連製のカメラを、エストニアからお迎えしました

旧ソ連という言葉の響き。

生まれたときはギリギリ存在していたとはいえ、物心ついた時にはとっくに消滅してしまっていた国。

隣の芝は青いと言いますか、手の届かないものに無性にあこがれてしまうのは、人の宿命とでも言いましょうか。

私たち平成生まれにとっては、ソビエト連邦を感じることができる機会というのは、ほっとんど無いに等しい。それを知る誰かの「作品」の中にしかないものでした。


時は過ぎ2019年。日本のひとりのゆとり世代の手に譲り渡された1台のカメラ。

ゆとりは「安いカメラで飽きるまで遊ぶぞ~」なんて軽い気持ちで買い取ったが、そんな安易な目論見は大幅に外れ、結構な時間とお金と労力をかけて、向き合うことになるのだった。

毎度おなじみチキステの誘いから、話は始まります。

「知り合いがエストニア輸入雑貨の店を恵比寿にオープンした。見に行かないか?」


エストニア輸入雑貨「Attachement(アタッシュマン)」

お店自体は

〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1丁目29−8 ITOビル2F

にあります。

恵比寿という近さ、絶妙な暇さからふらっと行ってみたお店は、可愛くて、綺麗すぎないけど丁寧なつくりがグッとくる商品が多くて、ヒヤかしンスのつもりだったけどもマルチクロス(あとで出てきます)を買ってしまった。

オンラインショップがないので紹介させてもらうと、エストニアという国はニットや小物などのハンドメイドが非常に盛んな国らしく、毎週開かれている衣料品の市場などに行って、オーナーが直接買い付けてきた商品が並んでいた。

エストニアの位置を見てみればわかるが、非常に寒そうな地域である。「1月に行ったときは暖かかったよ、マイナス20℃くらいだったけど」とかいう冗談みたいな気候だ。

そんな国で作られた、頑丈なつくりの手袋など、暖かいに決まっている。


また、歴史を見てみると1940年代から1991年までソビエト連邦を構成していた一部だったということもあり、エストニアの雑貨屋やコレクターショップには、ソビエトを感じさせる品々があるとのことだった。

実際に見せてもらったのは、1.8mほどの高さの壁一面に張り付けられた、レーニン・モスクワオリンピックの際に作られたと思われる、ロシア語の書かれたピンバッジ。日本でも本州ではほとんど見かけることのないキリル文字にテンションが上がる。

(ピンバッジは3枚目)

お店について話過ぎた。とにかくこのお店は行くとそれぞれの商品をオーナーが次々に紹介してくれ、オーナーの話も旅行記として面白く、思い出すだけで楽しくなってしまう。

話を戻します。ああそうだ、このカメラに出会うことになるきっかけも、このオーナーとのおしゃべりだった。

ピンバッジなどのおもしろい小物の仕入れの時の話をしていた時だった。

「僕は全然わからないけど、このお店はいわゆるマニア向けのお店で、いっろんな商品があったんだよ」

とオーナーが言った。


そう言われて僕が想像したのは、マニアじゃない人がマニアだと思うもの=カメラじゃないか?ということだった。しかもフィルムカメラ。

年季の入った、しかも読めない字が刻まれたカメラこそ、なにもわからない人にもパッと見で「うわこれはマニアックだ」と思わせるような気がした。なんとなくの勘だった。

ソビエトレンズと言えばHeriosのように、その特殊なボケ方が評価されているレンズもあるし、僕は幸いにPENTAX SPを持っているので、もしM42マウントにつけられるレンズがあれば楽しめるぞ。

そうして今日出会ったばかりのオーナーに、

「今度行ったとき、そのお店で古そうなカメラやレンズがあったら買ってきてくれませんか。僕が買いますから」

なんて、ずうずうしいことを言ったのだった。


再会、そして出会い

2018年が終わり、2019年になった。そして2月になった。前から予定していた、オーナーとチキステと飲む日だ。

前に買ったマルチカバーが気に入ったので、飲む前にお店に寄ることにした。

商品のラインナップが変わっている。「最近のエストニア流行の雑貨も仕入れた」とのことだった。

相変わらず絵のテイストが良い。どこか力が抜けているというか。


「そういえば、買ってきたよ」

そういって出されたのがこちら。

あった。やっぱり。

しかも合皮のケースもついてきた。

「持って帰って動いたら買う、でいいよ」

ケースを開け、いろいろ確認させてもらう。

読めない文字きた…!

しかもレンズにもボディにも、数字がいろいろ書いてあって何がなんだかよくわからない。

ここから裏蓋を開けることができた。

開けてまた驚いたんだけど、普通フィルムを入れる逆のサイドには、フィルムの端を受け止める軸があり、写真を一枚撮るごとにそこが回転し、次の1枚を撮る準備ができる。

このカメラはその軸がなかった。なぜか?古すぎたからだった。ただググれば、それは解決策がありそうだったので、買うことにした。


「いくらですか?」

「動くか確かめてからにしたら?」

「いや買います。」

フィルムカメラで、経年劣化で使えなくなることはない(と思う)。¥3,500で売ってもらった。

その日はオーナーとチキステと、エストニアのことやお店のこと、仕事の愚痴など(初めての食事会なのに)楽しく話して解散した。おごってくださりありがとうございました。


オールドカメラVSゆとり世代 1日目 ~格闘の始まり~

LOMO Смена-2

このカメラの名前です。読めないでしょ。読めないのが良いのよ。

英語に訳すとChange、スメナというシリーズの2作目らしいです。

どうやったらこのカメラが使えるか?調べるよりまず直感で探ってみることにした。フィルムと、フィルムを受ける軸の部分(パトローネと言うそうだ)を買い、外観の汚れ・機構の錆を落として、試しに撮影してみる。


買ってきたパトローネを見てみると、軸にフィルムを差し込む穴がない。どうやってフィルムをセットするんだ?仕方なくセロテープを買い、フィルムを軸に張り付ける。

フィルムを巻くのは、上部銀色の円柱状の部品を巻くことで、フィルムが動いているのを感じることができた。

シャッターは、正面左上、4.5という文字付近にある銀色のギザギザを下げることで半押しになり、正面左の8と11の間にあるギザギザを下げることで撮影ができた。

正面右下のギザギザはタイマーで、これを巻くとだいたい10秒くらいのタイマーになるようだった。


撮影してはフィルムを巻き、を繰り返していると、途中でめちゃめちゃ固くなった。無理やり巻こうとしたところ、ブチンという音がした。慌てて裏蓋を開けると、フィルムが切れてしまっていた。

切れたフィルムを見て、原因を考える。上部の点線部分がほとんど破けている。固い何かに当たったまま、引っ張られたような感じだった。

ああそうか、シャッターと、撮影のためのフィルム固定の解除が連動していないんだ。

これによりビックカメラでは現像できないフィルムが1本できてしまった。なかなか簡単にはいかない。

この日わかったのは、Смена-2の撮影は次のような手順で行うということだ。

1.フィルムをセットする

2.フィルムを巻く ある程度巻くと固くなり巻けなくなる

3.シャッターを切る

4.上の写真、大きな銀の板の右下の出っ張りを押し、フィルムの固定を解除する

5.2に戻る

また、もう1本分撮影してみたが、フィルムの先についていたセロハンテープも一緒に巻き上げてしまい、これも外部の現像所送りとなってしまった。


オールドカメラVSゆとり世代 2日目 ~殴られたような視界~

この日は仕事だったので、昼休みにカメラ屋へ行ってフィルムを買い、その帰りに撮影してみた。天気がめちゃくちゃよかったので楽しくなっていろいろなものを撮影した。

仕事が終わって再度カメラ屋へ行き、現像とデータ化をしてもらって出てきたのは、下のような写真だった。

撮れてはいるが、全体的にぼんやりとしている。ISO100のフィルムで、すべてSS100、F22で撮影しているのにもかかわらず、だ。僕は一度、頭を殴られたときに視界がこんな感じになったことがある。

現像してくれたスタッフさんもレンズの汚れを疑い、オーバーホールに出したほうがいいと提案してくれた。

しかしこの古いカメラを修理できるカメラ屋が一体どこにあるのか、調べても全く出てこないので、自分でどうにかしてみることにした。

薬局で無水エタノールと、綿棒を買ってきた。手前のLENSPENは僕が前の職場を離れるとき、お客様が餞別で贈ってくださったものです。

これでレンズのボディ側とフロント側を拭いてみると、引くぐらい汚れが取れた。本当に引いた。こんなに汚れたレンズでまともなものが撮れるはずがない。

フィルムを新たにセットして、再挑戦を誓うのだった。


オールドカメラVSゆとり世代 3日目 ~勝った!第三部完!~

いつもより早く起き、朝からカメラを手に、撮影しながら会社へ向かう。

何しろ会社に着くまでに24回シャッターを切らないといけない。なんでもいいから撮りまくった。

会社の近くに現像のできるカメラ屋があり、しかも朝9時から開いているのは僕にとってラッキーだった。朝現像に出し、昼休みに受け取りに行く。

撮れてる!!!

やばい、めっちゃうれしい。会社で後輩(1日目一緒にいた)にめちゃめちゃ見せびらかした。

しかし、実は喜ぶにはまだ早かった。それは、こんな写真も撮れていたからだ。

ご覧の通り、近いものを撮影しようとしたとき(具体的には、F8あたりの絞りにしていた時)に、ピントが合っていない。

F値は明るさと「焦点距離からどれくらいの範囲でピントが合うか」という単位だ。

そう、僕はまだ、「焦点距離の合わせ方」を知らないのである。


家に帰り、夕飯を食べた後、「とりあえず、今までの経過をブログにしておこう」と思いPCを取り出した。カメラを見ながら、あーだこーだ考えながら書いていると、ふとひらめいた。

「ロシア人とかがYoutubeで、使い方紹介してるんじゃないか…?」

思い立った瞬間がナントカ、昔の人はよく言ったもんだということで早速検索。

ロシア語の動画を見ること1時間、6本目くらいの動画を見ていて、あることに気づいた。


レンズとボディの間、

隙間あいてない!?!?!?

あと、僕のにはないボディ側とレンズ側にまたがる棒みたいなのがない!?!?

このレンズはM42のように、ボディが大きなねじ穴になっていて、そこにレンズをねじ込んでいきます。隙間が空いているということは、ねじこんでいる途中ということ。

ではこの棒の意味は?


この動画を見て思いついた仮説が、以下です。

・このカメラは、レンズ自体を回転させることで、焦点距離を合わせている。

・レンズの横に書いてある数字のうち、この棒のようなところ(正面真上のちょっと左)の位置が焦点距離を示している

・レンズにも突起があるので、本来はこの棒のところで止まる

・そしてそこがちょうど∞(無限遠)=そこまでで止まる設計


おそらくこの説は正しいと思う。なぜなら、動画と同じくらいの隙間に合わせると、ちょうど無限遠のところで棒に干渉して止まるし、焦点距離(m)の数字を小さくするほうに一周し無限遠のところに来る頃には、棒が干渉しないようになる(ように見える)からだ。

これなら、レンズの交換をしても、無限遠の場所を一定にすることができる。


というわけで、購入してからもうすぐ1週間が経とうとしていますが、僕はようやくこのカメラのちゃんとした使い方がわかったかもしれません。

もしこの仮説が正しくて、ちゃんと撮影することができたなら、僕は明日会社でもう一度、大きな歓声を上げると思います。


最後に一つだけ紹介。カメラ本体の写真で写りこんでいたボーダーのテーブルクロスが、Attachementで買ったやつです。色合いと肌触りが、なんとも落ち着くので気に入っています。

僕の無茶ぶりに答えてくれて、飯もおごってくれた上に、話も面白くてセンスもあるオーナーに会いたい人と、お店や商品が気になった人はぜひ、Attachement(アタッシュマン)へ行ってみてください。

チキステと僕に声かけてくれたらお供します。

ではまた明日の更新をお楽しみに!

ほねでざいん honesty-to-desire.inc

あれもしたいこれもほしい、欲求に正直なホモサピエンスのチラシの裏 I live honesty to my desire.

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